「大体ブラッドが悪いのよ!いつもいつも私を疑って!!」
「君がいつまでもふらふら出歩くから悪いんだろう!一度出かけたら数時間は帰ってこない!」
「浮気なんかしてないって言ってるでしょう!?そんなに私を不貞の妻にしたいのっ」
「ならば屋敷にいればいいだろう!子どももいるしいつまでも出歩くな!!」
「友人に会いに行くことくらい認めてくれたっていいじゃない!子ども達だってもう十分大きいんだから!!」
「駄目だ!!そもそも連絡なしに十三時間帯も留守にするのはおかしいだろう!」
「自分だって何時間帯も一人でいなくなったりするじゃない!どうせ女なんでしょう!!」
「私の女は君だけだ!それに比べて、君はあちこちの男と――」
「慎みがないみたいに言わないでくれる!?友人に会いに行ってるだけよ!」
「私だってそうだ!仕事に必要な人物に会いに行っている」
「あんたの仕事は爛れすぎなのよ!いっそ転職でもすればいいんだわ!!」
「てんしょ…っ、転職ってアリス、君な…」
「もっと平和でクリーンな組織を運営しなさいよ!」
「マフィアじゃないだろうそれは!?」
「マフィアなんて辞めちゃえばいいのよ!慈善活動でもしてなさい慈善活動!」
「何で私がそんな面倒で退屈そうなことをしなくてはならないんだ…!」
「忙しくて退屈しないかもしれないじゃない!」
「面倒だ!!」
「この面倒くさがり!出不精!引きこもり!紅茶狂い!!」
「それで何が悪い!」
「開き直らないでよ!」

「ブ、ブラッド、アリス……もうその辺で」

「「黙ってろ(なさい)、エリオット!!」」

「……………はい」

飛び交う罵声。
もう何が喧嘩の発端なのかいまいちよく分からない。
いつもはだ気だるげなブラッドまで、大声を張り上げてアリスに怒鳴っている。
負けじとアリスも言い返すから、二人の声のトーンはどんどん大きくなり、廊下の外まで響き始める始末だ。






「家出してやる!!!」
「駄目だ!!!」
「離婚よ!!!!!」
「するわけないだろう!!!」
「仕事と私どっちが大事なの!?」
「君に決まっているだろう!!」
「じゃあ私のためにもう一生紅茶を飲まないって誓える!?」
「…っ」

「――最低馬鹿ブラッド最低!!!!離婚してやる!!!!!!!」
「落ち着け!落ち着けアリス!!」
「私なんてどうせ紅茶以下なのよ!!」
「そんなこと言っていないだろう!!」
「言ったじゃないの!!!」
「言ってない!!!」
「言ったも同然だわ!!!」

「君だって私のために外出を控える気などないんだろう!似たようなことじゃないか!!」
「それは―――」
「私と他の男どちらが大事なんだ!!」
「貴方に決まってるでしょう!?」

「………」
「………」

「………」
「……っ」

「あぁ、泣かないでくれアリス」
「…っブラッドが悪いのよ」
「いや君が悪いだろう。ふらふらふらふら…連絡もなしに待たされる私の身にもなってくれ」
「だからブラッドが悪いのよ!前の前の夜、二人きりで過ごそうって約束だったのに…っ」
「あぁすまない。急な仕事が入った奴だな。あれはその場で殲滅してきた」
「楽しみに、っしてたのに…」
「最近一緒に過ごしていなかったからな。可愛い奥さんを抱いてもいない」
「酷いわ…っ」
「あぁそうだな。私が悪かった。私が悪かったから連絡もなしに何時間も他の男の元へ通い詰めるのはやめてくれ。嫉妬でどうにかなりそうだ」

「十時間帯に一回は夫婦で過ごす約束でしょうっ…?」
「もちろん破るつもりなんかないさ。あの後だってすぐに埋め合わせをしようと…」
「………」
「だが帰ってきたときには君は既に屋敷を出た後だったし、私に謝る時間もくれないなんて酷い奥さんだとは思わないか?」
「…思うわ」
「そうだろう?仕事より君が大事なのは間違いないが、仕事をしなくては妻と子どもを養えない私の気持ちも分かってくれ」
「…ごめんなさい、ブラッド。いつも頑張ってくれているのに…」
「いや別に頑張っているわけでは…でもそうだな、愛する妻と子どものために、私はいつだって必死だよ」
「ブラッド…」
「アリス…」





見つめ合い、今にも唇と唇が触れあおうとした所で、エリオットはぱたんと部屋の扉を閉めた。
廊下の外では使用人達が不安そうな顔をしており、振り返ったエリオットは『大丈夫そうだ』と口を開かずジェスチャーで合図する。
この先十時間帯はブラッドとアリスに仕事を入れるな連絡するな部屋に入るなと言いつけて―――――――



夫婦喧嘩犬も食わない

material from Quartz | design from drew

罵り合わせたかっただけ。執筆時間:5分(笑)

2015.08.06