教会に連れてくるような愛人は内縁の妻と同義。

今度は自分の領土の教会に連れて行ってあげよう。

しんしんと降り積もる雪がアリスの頬を掠める。
赤く火照った顔にその冷たさが心地よく、アリスは何とも言えない感情で俯き、ブラッドの腕に自分の腕を絡めて歩いていた。
アリスは何も言わないし、ブラッドも何も言わない。
教会を出てからというものお互いが無言で、(…ナイトメアのせいだわ)と半ば八つ当たりのような感情を抱き歩みを進める。
だがその速度は普段に比べると酷くゆっくりしていて、何だか立ち止まってしまいたい衝動があるのだからアリスは更に恥ずかしくなった。

離れたくない。帰りたくない。もうちょっとだけ――

何という乙女思考。
やっぱりナイトメアのせいよ、と――教会での出来事が頭の中をぐるぐると回る。
愛人。内縁の妻。遊びじゃない……
思い出す度顔が火照る。
自分の存在がブラッドにとってどういうものなのか理解しかけているだけに、今の状態が恥ずかしくて堪らない。

(甘い…甘すぎるわ)

べたべたではないか。
こんな、お互い意識して無言だなんてべたべた過ぎる。
付き合いたてのカップルじゃあるまい、むしろ行き着くところまで行き着いてるはずなのに、どうしてこんなに甘ったるく恥ずかしいのだ――と、アリスは俯いた顔を上げられない。
アリスにはブラッドを見上げる勇気がなかった。
羞恥心も殊更ながら、今ブラッドの顔を見てしまったら――
そして視線が交わってしまったら、アリスは茹で蛸になる自信がある。恥ずかしさで死ねるとはこのことだ。

歩む速度は遅い。
ブラッドが遅いのか、アリスが遅いのか。
雪が小さく肩に積もって吐き出す息は白いのに―――顔ばかりが熱くて、アリスはついに立ち止まってしまった。

「―――――」

急に立ち止まったアリスを訝しんで、ブラッドが自分を見下ろす気配がする。
だがアリスは顔を上げられないし、「ごめん」と謝って歩き出すこともできない。
声が出ない。どうして立ち止まってしまったのかもアリス自身には理解ができず、動かない足に彼女は更に困惑した。
これでは…これではまるで―――――



「……どこかへ寄っていくか?」

ブラッドの言葉に、はっとしアリスはようやく顔を上げた。
すぐ隣の男を見上げれば、口元に薄く笑みを引いて彼はアリスを見下ろしている。

「お嬢さんはまだ帰りたくないようだから…そうだな、あちらにアーケードがあっただろう。少し見て回ろうか」

アリスの返事も待たず、ブラッドは雪降る冬の領土へと引き返す。
帰り道とは逆方向。アーケードと言ったら、クローバーの塔のすぐ近くにある…先ほど行った教会よりも遠い場所ではないか。
クリスマスとバレンタイン、2つのイベント事に興じている冬の領土はかなり賑やかだ。
夜でも明るく人が入り乱れている。光輝くイルミネーションが幻想的で、夜の冬は絶好のデートスポットだというのに――

「ま、ま…待ってブラッド!」

ここでようやく、アリスは言葉を発することができた。
いつの間にやらブラッドはアリスの手を握りしめ、ずんずんと冬の内部へと進んでいく。

「し、仕事…仕事が溜まってるって…っ」
「そんなもの、エリオットにやらせておけばいい。仕事より――君と過ごす時間の方が有意義だ」
「でも…!」

それでも渋るアリスに、ブラッドは立ち止まり彼女の真正面へと向き直る。
突然のブラッドの行動にアリスは驚き彼の顔を見上げると、思いも寄らないほど真摯な瞳で見つめられて、アリスの心臓が一際大きく高鳴った。

「私は――君と過ごしたいんだよ、お嬢さん」

するりと頬を撫でる手。
手袋越しなのに、まるで直接肌と肌が触れあったような気がしてアリスの肩がびくりと震える。
するするとアリスの頬を滑るブラッドの指は優しい。

「君は…そう思ってくれないのか?」
「――――――」

ブラッドは卑怯だと、アリスは思う。
彼は自分がどういう気持ちでいて、どうして思わず立ち止まったのか分かっているくせに―
意地悪く笑みを浮かべてそうアリスにそう問うのだ。
これを卑怯と言わずなんと言う。
恥ずかしがって、意識しているのが自分だけのようではないか。
素直になれない自分が可愛げなく思えて、アリスは思わずブラッドから目を反らす。

アリスを撫でる指先は止まらない。
目元を赤らめて視線を下へと移した彼女に、ブラッドはくっとかみ殺したような笑いを漏らした。

「エリオットや門番達に土産を買って帰ろう。それならいいだろう?」
「………」

頬を染めて、俯きながらもこくんと頷くアリスが酷く可愛らしい。
そっと手を引くと、今度は大人しくついてくるアリスにブラッドは口元が緩むのを自覚した。
可愛らしいお嬢さんだ――と、ブラッドは自分より幾分背の低い彼女を見下ろして目を細める。

誰に言われずともアリスはブラッドの恋人≠セった。

恋する人。恋した人。
大事で堪らないと…ブラッドはそんな表情でアリスを見る。

一方アリスの心中は全く穏やかでは無かった。
どきどきと心臓の脈打つ音が激しくて、隣にいるブラッドに聞こえているんじゃないかと歯を食いしばる。
胸元をきゅっと片手で押さえれば、その鼓動が更に大きく聞こえてアリスの顔は火照るばかり。

(なんて―――)

なんて、ずるいのかしら――とアリスは思う。
ブラッドは卑怯でずるい。
繋いだ手が、歩く背中が、見上げた横顔が、格好良すぎて――アリスは死んでしまいそうだった。
声や態度に出すことはできなくとも、心の中でそう思えるくらいには素直になったアリス。
昔は何かにつけて嫌みたらしいと嫌悪し、その傲慢で自分勝手な所が大嫌いだったくせに、今のアリスはどうだろう。

気だるげでやる気のない姿も、実は裏で一人頑張っているのだと思ったら労ってあげたくなる。
その傲慢で自分勝手な所も、何かにつけて踏ん切りのつかない自分を引っ張っていってくれる。
独占欲や嫉妬心も、行き過ぎれば毒だがそれほどまでに求められて嬉しく思わないわけがない。

ブラッドの行動、言葉、彼の全てがアリスを支配して離さない。
重傷だ――と思った。
それが何より甘美なことだと思える辺り、アリスの心は重傷だ。

恋の病。

そんな可愛らしいものではないけれど、とにかくアリスは病にかかっている。
ブラッドと過ごす時間はそれが特に顕著だ。
今だって――アリスの頬は熱を帯びている。



「……クリスマスとバレンタインにちなんだ、にんじん関係のものはあるかしら」

ふと口をついて出た言葉。
色んなものを紛らわすために、苦し紛れに出た言葉。

「……普通の土産でいいだろう。こんな場所にまで来て見つけたい代物じゃないな」

だがそれは、今の空気を変えるには実に効果的な言葉だったらしい。
げんなりしたブラッドの声に、アリスはようやく笑いを零した。






□■□






あの頃のブラッドは忙しかった。
偽悪家で、真面目に仕事をしてるだなんて思われたくない彼が珍しく仕事に集中していた。
彼は普段から仕事をしていないわけじゃない。
むしろ人一倍している方だし(本人は認めないが)エリオットだけじゃ判断を下せないものも多いと聞く。

ブラッドは真面目だった。
日頃から真面目な彼が、あの頃あんなに忙しそうに仕事をしていた理由をアリスは知らない。

そしてそれは今もだ――とアリスは思う。
結婚して、夫婦になっても妻には夫が何をしているのか分からない。
ふと自分の母親はどうだったのだろうと――。
もうほとんど覚えていない…父の仕事場に立ち入っても唯一怒られなかった母。
母は父が何をしているのか、どんな仕事をしているのか、あの人は知っていたのだろうか。

…知っていたに違いない。
そうして影ながら、夫を支えていたのだろう。
父の中で母の存在というのはあまりに大きく、大きすぎたが故に失ったとき耐えられなかった。

ならば自分は――?

降り積もる雪。曇った窓ガラスに映った自分自身を見つめてアリスは深い溜息を吐いた。
きゅっとガラスを擦れば、透明な板の向こうでしんしんと雪が降り続いている。
今の帽子屋領内は冬。
この寒い時に、面倒くさがりの夫は部下を引き連れてどこかへ出かけてしまった。
アリスに何も告げず、アリスを一人ベッドに残して仕事に行ったのだ。

アリスはマフィアの仕事に関わりたいわけじゃない。
血生臭いことは苦手だし、役付きになった今でも身体能力は高くない。
暴力的なことは嫌いで争いなんか見るのも嫌。
余所者であった名残りは時計になった今でも根強くて、他の皆とは未だ疎外感を感じる。

アリスは母と違い夫を支えることなどできない。
自分の夫は強く、優秀で、天才的な努力家だ。
アリスに支えて貰わねばできないことなど何もない。
夫の仕事に関して言えば、むしろアリスは邪魔ですらあると感じる。

夫婦になってもアリスは所詮お客様だ。
庇護される立場。名ばかりの女主人。
屋敷の管理全般を任されているとは言え、そんなもの――当時から多忙を極めていたエリオットでさえ片手間でできていたこと。
それでもエリオットは受け持ってくれたら助かると喜んでくれたが、それがアリスの自信になることはなかった。

庭では使用人達が雪かきをしている。
少し遠くに目をやれば、双子が作ったのかやけに凝った雪像が立ち並ぶ。
アリスがこの屋敷でしていることは何だろう。
ブラッドが急にやると言い出したクリスマスパーティの準備?
時折血に塗れて帰ってくる夫と友人を出迎え労ること?

アリスは自己嫌悪していた。
せめて銃が握れて撃てたら良かったのか。

アリスには分からない。
夫婦なのに夫を支えられない妻の意味が。

(…これが姉さんなら、うまくやったんでしょうね)

全てにおいて完璧な姉。完璧な淑女。
アリスは姉を忘れない。過去の後悔を悔い改めても、姉に対する羨望は変わらない。

姉になりたいとは――もう思わなくなっていた。
アリスはアリスでいいと知っている。
だがブラッドの…夫の役に立ちたいと思う感情は、嫌でもアリスの記憶から姉を引きずり出す。
羨ましいのだ。自分がうまくやれないから。
うまくやれている人が、羨ましい。



ブラッド達が帰ってきたのは、それから3時間帯後の夜だった。
「おかえりなさい」と駆け寄れば、「ただいま、奥さん」と触れるだけのキスをくれる。
それに対してずるいずるいと騒ぎ立てる双子にエリオットの怒号が飛ぶのはいつものことで、「何か変わったことはありませんでしたか?」と自分の身の上を案じてくれる使用人の態度もいつものことだ。

「大丈夫よ」と笑顔で答えるアリスの心中は、決して穏やかでなかった。
自分の存在意義が見いだせなくて、悲観的な妄想に囚われる。

アリスとブラッドはもう恋人≠ナはない。

恋する人。恋した人。
そうであることに代わりはないが、アリス達の関係はもうそんな次元の問題ではない。

ブラッドの行動に、言葉に、一喜一憂し見惚れていたアリスでは駄目なのだ。
彼はきっと許してくれるだろう。だがそんな自分をアリス自身が許せない。
自分の存在に意味を見いだしたいのは、時計であろうと余所者であろうと、きっと大差のない感情なのだとアリスは思う。





「クリスマスパーティの準備はどうだ?」
「順調よ。さっきの時間帯ににんじんも届いたの。キャセローラを作るためには結構な数のにんじんが必要で―「なんて余計なことをしてくれたんだ君は」」

「しょうがないじゃないのエリオットの要望なんだから」と言うアリスに、ブラッドは眉間に皺を寄せて盛大に溜息を吐いた。
そんなブラッドを気にもせず、アリスは彼から帽子を取り上着を脱がせてクローゼットの中へと仕舞う。
所々破けたり血痕がついたりしていたが、ベストだけの状態になったブラッドを見る限り本人に傷はない。
「だるい」「疲れた」とソファーに腰を沈める夫を見て、アリスは背後からそのタイを緩めそれを奪った。

「…随分長く出ていたのね」
「この間屋敷に来たらしい他勢力の使者を門番が斬り殺してしまってな…その後始末だ」
「……あの子達、お客様と敵の区別は本当につかないの?」
「つかないから殺してしまったんだろう。色々文句を言われて面倒だったから、その組織ごと潰してきた」
「………」

…多分、この夫を支えたら自分は終わりだと思う。

アリスの中に残っている良心と常識。
それに従うならブラッドのやっていることは理不尽極まりなくて、とてもじゃないが支える気にはなれない。が、咎めることもしない。
それでブラッドが怪我をするのは嫌だし、仲間が死ぬのも嫌。
そんなことになるくらいなら顔も知らない誰か≠ェ死んでしまった方がいいと――大分染まってきたアリスの常識≠ェ言う。

私は自覚のある悪女が好きなんだ。

悪女というか…性格が歪んでいるだけだ。
自分が良ければ何でもいいということ。
だがアリスはそんな自分を昔ほど嫌悪していない。
自分が良ければ何でもいいの代表は、アリスの目の前にいる。



「…冬の街並みはどうだった?」
「ん?あぁ…イルミネーションが眩しかったな。夜だというのに明るすぎて…仕事に向かない季節だ」
「その感想は…どうなのかしらね」

時間ができたら教会に行きましょう?
クリスマスにちなんだイベントをやるって、子ども達がちらしを配っていたから。

「それは構わないが、君の仕事はいいのか?」

真面目な君が、自分の教会でイベントを開かないわけがあるまい。

そう続けたブラッドにアリスは苦笑する。
仕事で忙しそうなのは貴方じゃない…と、言いかけてアリスは口をつぐんだ。
構ってもらえなくて寂しいと言っているようで、柄じゃないと首を振る。
そんなアリスの様子を見て、ブラッドはすっと立ち上がり、クローゼットの前で俯く妻の頬に手を添え顔を近づける。

「――何を考えているんだ?アリス」

さぁ、吐きなさいと言わんばかりの目。
口元には薄く笑みを引いているがそれが更に薄ら寒い。

「――いえ…?昔、クリスマスデートをしたなと思って…」

ほとんど苦し紛れに出た言葉。
ブラッドは「ほう?」と更に笑みを深めてアリスの腰へと手を回す。

「デートがしたいのかな?奥さん」
「まぁ…したくないとは言わないわ。出かけるのは嫌いじゃないし」
「確かに――最近仕事ばかりで構ってやれなかったからな。この間も君を一人でベッドに残していくなど、悪いことをした」
「――――仕事なのだから、仕方が無いわ」

そうよ、悪いことよ。
何も告げずに、メモみたいな紙切れ一枚残して仕事に行くなんて酷いわ。

そう言ったら、ブラッドはどんな反応をするだろう。
喜ぶような気がする。ブラッドは私が子ども染みたワガママを言うのを酷く好む。
束縛や干渉が嫌いなくせに、私がすると喜ぶのだから変な男だ――と、アリスは今更なことを思って口元を緩めた。

「?…なんだ?面白いことでもあったか?」
「いいえ、気にしないで。思い出し笑いよ」

ふふっと彼の胸に額をくっつけて笑うアリスに、ブラッドは訝しげな表情をして両手で彼女の腰を抱き寄せる。

「なんだ…機嫌が悪いのかと思っていたが、そうでもなかったらしい」
「…悪そうに見えた?」
「怒ったり拗ねたりしているわけではなさそうだったが、どこか様子がおかしかったからな」

「よく見てるのね、旦那様」
「当然だよ奥さん。妻の機嫌を気に掛けるのも、夫の重要な役目だ」

あら素敵。

そう軽口を叩いて流せる程度には――慣れたなぁとアリスはブラッドの背中に手を回す。
初めてブラッドとクリスマスの街並みを歩いたときは、恥ずかしくて顔も上げられなかった。
離れたくなくて、帰りたくなくて、それこそこのまま時間が止まってしまえばいいと…
酷く乙女な思考でいたものだ。
もっと色々見て回りたかったくせに、実際そう提案されるとどうしていいか分からず拒否の構えを見せたりして――
エリオットや双子にお土産を買うためと、そんな口実がなければクリスマスの街並みを彼と歩くこともできなかった若い自分。

冷めていて、偏屈な子。
アリス=リデルはそんな女の子だったくせに。
あの時ブラッドとクリスマスを過ごしたアリス=リデルは、似合わないほど十分その辺にいるオンナノコだった。



「―――外は寒い。部屋の中で私を労ってくれないか?アリス」

耳元で囁かれる声。
ふっと笑いながら「妻らしく?」と尋ねると、「そうだな。家で夫を癒やしてくれるのが妻の役目だ」とこちらも笑いを含んだ返事が返ってくる。

家で夫を癒やすのが妻の役目。

思わぬ所で自分の役目を与えられたアリスは、ブラッドの腕の中で軽く目を見開いた。
夫を支えられない駄目な妻。そう思って多少なりとも自己嫌悪していたはずなのに、こんな冗談交じりの些細な一言で浮上した気持ちが、思わずアリスの涙腺を緩める。



「っ―――」

「アリス?」



こんなことで嬉しく思って泣いたりする自分は絶対おかしい。
あの頃よりは大人になったはずなのに、感情はどんどん子ども染みていく。

素直になった?違う弱くなっただけだ。

ブラッドの愛人でも情婦でも、どうでもいいと投げやりになっていたアリスが懐かしい。
今のアリスはブラッドがこうして自分を愛してくれないと、無いはずの心臓がはち切れそうだった。

「――…夫を支えるのが、妻の役目でしょう?」

思っていたことを尋ねる。思い出すのは母だ。
アリスはブラッドの役に立ちたい。

「ふむ……私を支えるか…と言っても、それはエリオット達で十分足りている」
「―――――」

「だが―――私を癒やしてくれるのは君だけだ、アリス」

あぁほら…ブラッドはずるいと思う。
いちいちずるくて卑怯だと、アリスは全てをブラッドのせいにする。

「なんだ…これが今回の自己嫌悪の議題かな?妻とはなんたるか、と言う…」
「なによ、自己嫌悪の議題って」
「その通りだろう。自己嫌悪は君の得意技だ。何も無くとも落ち込むくせに…」
「別に落ち込んでいたわけじゃないわ。考えていただけよ」
「様子がおかしいと思うくらいには落ち込んでいただろう。相変わらず無駄なことをする――」

はぁと大げさに溜息を吐いてみせるブラッドに、反発しようと顔を上げたがその後に言葉が続くことはなかった。

「んっ」

声も吐息も全て飲み込むように降ってきたキス。
慣れた行為だ。慣れない行為だ。
ブラッドの一挙一動が、アリスの全てを支配する。


「君にしかできないことがあるから――君は私の妻なんだよ?奥さん?」


離された唇。甘い吐息。
甘い、甘い…――


(重傷だわ――――)


アリスは病にかかっている。
名前のない、不治の病だ―――――――



その病原体の名前は

material from Quartz | design from drew

ジョーカーの教会の話が好きです。

2015.06.18